座間の「ちゃきちゃき(不動講)」

閑静な住宅街に響く不思議な「チャキチャキ」という音! その正体は一体……?




私の住む神奈川県座間市の一部では、毎月27日の夜に「ちゃきちゃき」という独自の行事が地域の公民館で行われている。

実は、この公民館には「座間不動尊」という別名があり、一般的には「オフドウさま」や「オフドウさん」で通っている。名前の通り当地はかつての座間郷の不動尊(不動明王)であり、実際時期になるといわゆる「護摩焚き」もひっそり行われていたりする。

注:イメージ

ざっくりいうと、この「ちゃきちゃき」もお不動さまの行事であり「不動講」の一種だ。
具体的には、地域の女性の方々が寄り集まって、小さめの拍子木(火の用心の時のあれ)を叩くというものであり、月末に夜な夜な響く「チャキチャキ」という音の正体はこの拍子木の音なのである。

また、不動明王信仰には「真言」というものがあり、ちゃきちゃきの際もこれを唱える。以下は参考までにその音写の例である。

「なうまく さんまんだば ざらだん せんだま かろしゃだ そわたや うんたら たかんまん」

たぶん正確な音節の区切りは異なるが、座間のお不動さまで読み上げられる際は概ねこのような音節で区切られている。また「かろしゃだ」の「か」にアクセントが置かれ、一旦音があがり「そわたや うんたら」は駆け降りるようにほぼ一節で読み上げられるのも特徴的である。
これを大体10~15分延々と繰り返し読み上げるのだが、この間拍子木を打ち続けると腕が結構きつい(笑 真言の意味は「どうか不動明王様、悪い魔を粉みじんにしてください!」的なところだそうだ。

更にひとつ面白いのは、「ちゃきちゃき」は一種の地域の伝統行事のひとつであるが、その参加者は基本「女性」であり、また行事に際して供するお茶代も女性の名で拠出される。これは過去から続く伝統なのだとか。
家内を守るという面から女性主体となったのか、あるいは講中の名を借りた最古型の女子会だったのか、もはや真実は定かではないが、女性主体の行事が過去から脈々と続いているのは興味深い事実である。

しかし、現代にあっても、ちゃきちゃきは地域の人と人とのつながりを紡ぐという点では、大きな役割を果たしているといえるだろう。

そもそも座間市のなかでも「座間」という地域は、特に田舎気質の抜けない集落なので、近所の人間の大半が同級生であったりするわけであるが、近すぎる故に、逆に改まって一堂に会して昔話や近況について花を咲かせるという機会は、こういう行事がないと案外作れないのだろう。

このように「ちゃきちゃき」は座間の貴重な歴史資産であり、また地域の伝統的な交流の場でもある。微力ながら私もお茶くみ等で協力したいと思うので、今後も末永く残っていって欲しいと切に願う。

以上、今回はかなりマイナーな座間の「ちゃきちゃき」の話でした。