知っているようで知らない「住所」の話!

今回は意外と知らない「住所」のお話です。




お久しぶりです!こんぶです。いよいよ我が座間市でも入谷西地区で住居表示が実施されるそうなので、今回は住所の話をしてみたいと思います。

まず、当たり前の話ですが、住所とは自分の住んでいる場所を示すものです。皆さんの住んでいる地域でも○○一丁目△△番□号なんていう表記を使っているかと思います。しかし、一言に住所といっても、表記の方法にはいくつか種類があります。今回はそんな知っているようで知らない住所の世界を紹介します。

※結構長いのでめんどくさい人はこちらだけ読めばたぶん平気です。

住所って何だ?

まず、この記事の中に出てくる言葉について確認しておきたいと思います。例えば、住所、地番、番地、住居表示等、同じような言葉ですがそれぞれ若干意味が違います。

まず「住所」は、文字通り「住んでいる場所」のこと。自分がどこに住んでいるのかを単純に示し、それぞれ後述しますが、その地域で住居表示が実施されていれば住居表示が「住所」、未実施の場合は「地名地番」が住所になります。

つづいて「地番」とは「土地に対してふられた番号」です。例えば○○1丁目2345番という土地があったとすると、「2345番」の部分が「地番」です。前の「○○1丁目」は「町名」または「大字」と呼ばれ、その場所の地名を示します。土地の所在を示すときは、この地名と地番を用いるので俗に「地名地番表記」などとも呼ばれます。叙述の通り、住居表示が実施されていない地域では、地名地番がそのまま「住所」となります。

同じく番地についても、地番と意味合いはほぼ同様で、少し乱暴ですが2345番と書くか2345番地と書くかくらいの差です。

最後の住居表示は、地名地番が土地の所在を示すのに対して「建物の所在」を示します。詳しい内容は後ほどふれますが、ここでは、住所といった場合は「現在住んでいる場所」、地番は「土地の所在」、住居表示は「建物の所在」をそれぞれ示すものと覚えておいてください。

住所の基本構造

話を分かりやすくするため、ここでは上のような架空の住所を使ってみたいと思います。住所の細かい話に入る前に、まずそれぞれのパーツを簡単に確認しておきましょう。

図中①の部分は「都道府県名」です。これは説明するまでもないと思いますが、神奈川県や東京都あるいは京都府というような、その行政区域内にある市町村を包括する広域自治体の単位です。

続いて②の「郡」はやや特殊な存在で、基本的には市町村の内「町村」に限って町村名の前に付随します。
中国の郡県制に由来する歴史の深い制度ですが、現在は行政区域としての意味はほぼなく、その地域を示す程度の役割しか果たしていません。また神奈川県でいえば、かつて座間が所属していた「高座郡」も現在は寒川町のみとなっており、郡内に1つの町村しかない場合などもあります。

③の部分は「市町村名」です。都道府県同様に説明するまでもありませんが、市町村は地方自治体の基本単位であり、それぞれ人口規模等により区分されます。
「市」については原則5万人以上(特定の条件を満たせば3万人以上)で市へ昇格できます。「町」は各都道府県が条例で定める要件を満たせば町へ昇格できます。「村」については特に要件が定められていないため、市町以外が該当すると考えてよいかと思います。
なお、それぞれの区分間は「昇格できる」であり、昇格は義務ではありません。逆に人口要件を満たさなくなった市が町になることも制度上は想定されますが、2020年現在降格が行われた事例はありません。

④の部分は「町名」または「大字(おおあざ)」と呼ばれるもので、ざっくりいうと市町村内の一定の地域を示します。座間で例えると「新田宿」や「栗原」、あるいは「相模が丘一丁目」などがこれに該当します。なお、大字と町名については特にそれぞれを分ける定義はないので、この記事内ではほぼ同義のような扱いとします。また余談ですが、大字の名称と区域は過去の村名などが基になっていることが多いです。(新田宿→旧新田宿村)

⑤は「小字(こあざ)」と呼ばれる部分で、④の大字のなかの更に細かい地域を示す地名です。基本的に「大字+小字」の形で利用されるので、「○○一丁目」などの表記の場合は小字は使用されません。また昨今は住所表記上は省略されることも多く、本来なら「新田宿字中屋敷514番」と表記されるものが「新田宿514番」となる場合もあります。

小字と大字については、こちらの記事(「意外と知らない座間の地名」)も参考にしてください。

最後の⑥は「地番」です。地番とは土地の所在を示す為に、各「土地」に対して振られた番号であり法務局が所管しています。また市町村によって「住居表示」が施行されている場合は、地番の代わりに「街区番号(街区符号)」+「住居番号」を用いた住所の表記等が使用されます。(地名地番と住居表示の詳しい違いは後述)

さて、以上が日本における住所の構造の概略です。思ったより長くなってしまいましたが、気にせず続けます!

地番表記と住居表示の違い

さて、うえでもちょろっと触れましたが、住所には「地番表記」と「住居表示」という2通りの表示方法があります。しかし、この2つの違いって皆さんご存知でしょうか。まずは次の図をご覧ください。

それぞれ架空の「昆布市塩漬1丁目」というところを示す住所です。しかし塩漬地区では平成31年4月付で住居表示が実施された為、住所が①から②の表記に変更になりました。

まずは構造の説明ですが、①が「地番表記」というもので、①の内の「893番3」が土地の所在を示す「地番」です。さらに「893番」が親地番、それに続く「3」が枝番です。
なお、住所としての地番の読み方や表記の正式な方法は市町村で微妙に異なります。座間市の場合は「893番地の3」という表記で、親番と枝番の後に「の」が入ります。

つづいて②は「住居表示」が実施された場合の表記で、②の内「8番」が「街区番号」、また「10号」が「住居番号」となります。街区番号とは道路や地形・地物を境として一定の区域をひとつの塊としたものです(画像参照)。「住居番号」というのは、街区内のそれぞれの「住居」に対してふられる番号です。
なお、制度上は外国式の「通り名」+「住居番号」も想定されていますが、あまり利用されていません。日本では通りに名前がある方が少ないですからね……笑

この地番表記と住居表示の大きな違いは、地番表記は従来の「土地の所在」を住所として使っているのに対して、住居表示は地番とはまったく別に「新たな住所番号」を割り当てています。また、地番を所管しているのは「法務局(=国)」ですが、住居表示は「市町村」が所管しています。

そのため、勘違いされる方も多いですが、住居表示が実施されても「地番」は消滅せずそのまま残り続け、土地を売買する際の手続き、あるいは固定資産税の課税対象等については、引き続き地番を使うことになります。また、保険や役所の手続きなどで「土地の所在地」といった場合は通常「地番」を指します。また戸籍法上は本籍というものがありますが、本籍はその人が所属する「土地」を示します(要するに国籍)そのため、本籍は地番で表記するのが一般的ですが、住居表示にすることも可能です。ただし本籍はあくまでも所属する「土地」なので、建物番号は含まず街区までになります(例の場合は昆布市塩漬一丁目1番まで)

まとめると、地番はあくまでも「土地」の所在を示し、一方の住居表示は「建物」の所在を示すものなのです。

ちなみに蛇足ですが、住居表示と混同されがちなものに登記簿上の「家屋番号」というのもありますが、これは法務局が地番と合わせて独自に付番しているものなので、住所として用いることはできず、また住居表示とも一致しないことが多いです。ややこしいですね!

なぜ住居表示を実施するのか?

なぜ住居表示が実施されるのかというと、主に「地名地番の住所の表記がわかりづらいから」という理由が大半ではないでしょうか。これは「地番」という制度の性質の問題で、同じ大字(町名)の地番でも10番の隣が300番だったりと、往々にして位置関係がバラバラなことが多々あります。

かつて家がまだ数件しかなかった時代なら地番から家を特定するのも容易だったのでしょう。しかし、所狭しと家屋が密集する現代では、このようないわゆる「飛び番」状態であると、例えば荷物を配達する際に郵便局や宅配業者の人が家を見つけにくくなり、誤配送や宛先不明となる可能性もあります。Amazonやヨドバシカメラなどの通販最盛期時代の昨今、荷物が届かないのは割と死活問題です(配達員さんありがとうございます……)

この問題を解決するために考案されたのが「住居表示制度」です。前述の通り、日本の住居表示は概ね「街区番号」+「住居番号」で構成されます。そのため、街区の位置がわかれば大体の場所がわかることになりますので、地番よりは場所を特定しやすくなります。

住所のパターン

続いて、住所の表記方法の例を見ていきたいと思います。ちょっと複雑になってしまいましたが、表にA~Dまで4つのパターンをあげてみましたので、それぞれの特徴を見ていきたいと思います。

Aパターン(大字+小字+地番)


Aパターンは典型的な旧来の住所パターンであり、いまでも田舎の方などでよく使われています。構造的に見ていくと、aの「鈴梨県」は都道府県です。bの「米倉郡」は地域を示す「郡」であり、続くcの「小結町」は市町村です。さらにdが「大字」、eが「小字」、fが「地番」です。ちなみに大字と小字の間に「字」という文字がありますが、これは「あざ」と読み、この場合は「スズナシケン ヨネグラグン コムスビマチ ウメボシ アザ アカシソ 1145バン14」となります。

Bパターン(大字または町名+地番)


BパターンはAパターンから「小字」を省略した形式であり、これもまだ広く利用されています。神奈川県の特に県央でもよくつかわれており、例としては座間市四ツ谷や大和市下鶴間、海老名市勝瀬などがこれにあたります。ただし、住所上は小字が省略されていても、登記簿上は小字が残っている場合も多いので注意が必要です。(座間でも新田宿東裏などは登記簿上は今も残っているようです)また、相模原市南区や横浜市中区のように市町村の後に区がついたり、あるいは東京23区に限りますが、大田区や杉並区のように市町村なしで代わりにcの部分に「区」が直で入る場合もあります。

なお一部前述しましたが、大字の部分が代わりに「○○△丁目」というような形になっている場合もありますが、実は「町名」と「大字」の違いについては明確な定義がないので、分類上は概ね同じものです。現在の座間市の入谷△丁目や座間△丁目、あるいは東京の神田神保町△丁目などがこれに該当します。

それと、やや例外ですが、京都での住所の表記として「京都市中京区○○通□□上ル△△810番」なんていう表記もあります。これは一見すると通り名を使うパターン「D」の住所のようにも思えますが、実は「○○通□□上ル」は省略することができ、実際、郵便物を送る際などは「京都市中京区△△810番」で届いてしまいます。なのでこの京都独特の住所の表記も、分類的には大字+地番を使ったものであり、このパターン「B」に分類されると言えるでしょう。

Cパターン(大字または町名+住居表示)


Bパターンに住居表示が施行された状態で、おそらく日本においてはもっともポピュラーな形式です。座間市の相武台△丁目や相模が丘△丁目、あるいは相模原市南区松が枝町などがこれに該当します。構造としては、gが「街区番号」、hが「住居番号」を表しています。
ただし、一部のマンション等では「8番10-201号」と言ったように部屋番処理がなされる例もあります。また密集した市街地では「10号2」のように住居番号の後に枝番がついたり、あるいは「10-2号」という形で枝番が付く場合など、表記方法については自治体により若干差があるようです。

ちなみに座間市の明王は「座間市明王19番19」というような住所を使っています。一見するとこのパターンCの住所にも見えますが、しかし実はこれは住居表示ではなく区画整理によって整った「地番表記」を使用しているので分類的にはパターン「B」に該当したりもします。ムツカシイ。

また例外として北海道札幌市のような、条目整備が行われている都市については「札幌市中央区 北1条西1丁目 4号」というように、街区番号を振らず「町名・大字+住居番号」とする場合もあります。

Dパターン(道路名+住居表示)


これはちょっと例外のパターン。日本においては、街区番号+住居番号を用いた住居表示が一般的ですが、Dパターンの場合は街区番号の代わりに「道路名」(jの部分)を使います。外国ではこちらのほうがポピュラーな表記方法となっていますが、日本ではちょっと馴染みがありません。実在の例としては、山形県の東根市の一部で採用されており、「山形県東根市板垣中通り1号」などの表記になります。

ちなみにDパターンの道路名式の住居表示には直接関係ありませんが、このパターンの例では市名の後に区名がついており、これは政令指定都市等にみられる方式です。横浜市や相模原市など実際の例ですね。

住所についてのまとめ

さて日本の住所表記について長々と書いてきましたが、最後にざっくりとまとめておきたいと思います。めんどくさい方はここだけ読めばいいと思います(乱暴)

○ 日本の明治以降の伝統的な住所表記は「大字」+「小字」+「地番」を用いた「地名地番表記」。(例:座間市四ツ谷字柳原514番地) ※大字小字についてはこちら
○ 地名地番表記でも、最近は小字は省略される場合がある(例:座間市四ツ谷514番地) ※しかし、登記簿上は小字が残っていることも多いので注意。
○ 地番は制度上飛び番が多く、1番の隣が1000番だったりする。
○ 住居表示は市町村が実施・管理する。地番の管理は法務局(国)。なお、住居表示・地名地番表記問わず、住所の登録は市町村で行う。
○ 住所は「住んでいる場所」、地番は「土地の所在地」、住居表示は「建物の所在地」をそれぞれ示す(=建物がないところには住居表示はない)。
○ 住居表示が実施されても地番は別に残っており、基本的に、土地の売買や課税は地番毎に行われる。また、建物がない土地の所在について地名地番表記が用いられる。
○ 住居表示は「町名・大字(緑ケ丘一丁目)」+「街区符号(1番)」+「住居番号(1号)」で構成されるものがほとんど。(例:座間市緑ケ丘一丁目1番1号)
○ 要するに所在がわかりにくい「地名地番」の代替として利用するのが「住居表示」なのです。

このあたりだけ理解できれば「住所制度に詳しい人」になれると思います(どういう人なんだろう……笑)
以上、今回はざっとですが日本の住所制度についてまとめてみました。日常生活で度々使っている住所なのに、よく考えてみると意外とわからないことが結構あるものです。街に出たら、街区表示板を眺めて「これが町名で、これが街区番号~なんて住所マスターを気取ってみましょう!きっと周りの人から奇異の視線、いえ、尊敬の眼差しを集められること請け合いです。

以上、たまには少しためになることを書いてみたこんぶでした。



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